民事再生⑥(事業の継続を前提とした処分価格の鑑定評価手法の確認)
1.事業の継続を前提とした処分価格の鑑定評価手法
事業の継続を前提とした処分価格の取引事例を収集することは通常は困難であり、一般的には比準価格は求め難いので、実務上は、DCF法による収益価格を標準とし、早期売却市場減価の手法による価格を参考に鑑定評価額を決定します。
2.当事者の観点
(1) 債権者(担保権者)側
正常価格即ち積算価格を基準に、できるだけ高い方が良いと考えています。
(2) 再生債務者(スポンサー)側
事業収支即ちDCF法による収益価格を基準に、できるだけ低い方が良いと考えています。
3.DCF法による収益価格について
(1) 事業収支について
赤字が継続してきた事により、民事再生手続きとなっているので、鑑定評価時点では、経営主体の交代等により経営内容を改善し、今後は黒字化していかなければ民事再生は成立しません。
従って、事業の継続を前提とした鑑定評価において、DCF法による収益価格が零以下になることは無い事になります。
なお、再生債務者(スポンサー)側の鑑定評価書において、零以下の価格を試算しているケースが見られますが、上記観点により、当該鑑定評価は正しくない事になります。
(2) 特定価格について
民事再生法に基づく評価目的の条件下において、対象不動産の早期売却を前提とした価格を求めるものであり、求めるべき価格は特定価格である。
従って、早期売却を前提として求めるDCF法による収益価格は、正常価格ではなく特定価格になります。
次回にはDCF法による収益価格の特性を正確に理解していない事により、一部に間違った運用をしているケースが見られますので、具体的に説明してみたいと思います。
-日本アプレイザル㈱-