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民事再生⑦(DCF法による収益価格)

DCF法による収益価格の特性を正確に理解していない事により、一部に間違った運用をしているケースが見られますので、今回は、不動産鑑定においてDCF法を採用するようになった経緯等を含めて説明したいと思います。

1.DCF法採用の経緯

平成2年の東京証券市場株価大暴落を機とするバブル崩壊後、平成4年から本格的な地価の下落局面に入っていきました。

地価の下落局面では、不動産市場は買手市場となり、買手側は現時点の正常価格からどれだけ安く買えば損をしない、得することができるか、売手は逆に損を少なく、あるいは損金処理可能な範囲内で売却できるか、即ち2割引、3割引、8掛、7掛という交渉の中で売買が成立していました。

しなしながら、いつまでも下落局面が続く状況を打破しなければ日本経済は再生できないという流れとなり、不良債権処理がいわゆる国策となりました。

従って、不動産の価格を、これまでの掛目、掛算から、将来のリスクを利回り、割算で捉える収益価格が標準となり、更にX年後に売却することを前提に購入時の投資採算価格を求めるDCF法による収益価格が出現しました。

利回りをリスクで捉える考え方、更に収益物件としてX年保有してX年後に売却して利潤を得るという考え方は、不動産鑑定士にとっては「黒船の来航」革命のような出来事であり、其の後の鑑定士の更なる二極化の原因になったと思料されます。

2.DCF法による収益価格の間違った運用例

上記DCF法による収益価格は、早期売却を前提とした特定価格と同レベルで求められています。

従って、上記積算価格についても、通常であれば相当な乖離が生じるので、周辺の規範性のある取引事例等を採用しない方法等により、DCF法による収益価格に近づけるため大幅に低く求められています。

次に、本来は特定価格であるDCF法による収益価格を正常価格と見做し、更に競売市場等を参考に早期売却市場減価を行って鑑定評価額を決定しています。

上記間違った運用例は、再生債務者(スポンサー)側の立場としてできるだけ安くしたいという結果だと思いますが、DCF法による収益価格が出現した経緯、投資採算価格という特性を理解していれば生じない事であり、今回、過去の現象面の再確認という観点から検討してみました。

-日本アプレイザル㈱-