不動産競売 -日本アプレイザル㈱-
1.定義
不動産競売とは、民事執行法に基づき、債権回収のために、債権者が裁判所に対して申立てを行うと、その不動産を裁判所が売却する手続である。
強制競売と担保不動産競売を併せて一般に不動産競売(ふどうさんけいばい)と呼称しています。
2.競売の読み方について
先日、ある方から、「きょうばい」「けいばい」どちらの読み方が正しいのかとの質問がありました。
私は、今から約37年位前に、大先輩の不動産鑑定士から「海はきょう艇」「陸はけい馬」だから、けい売が正しいと冗談半分に教わりました。
裁判所では、たぶん他の民間等のきょう売と区別するために「けい売」と呼称してきているんだろうと思料しています。
3.不動産競売は、強制競売と担保不動産競売とに区分されます。
(1)強制競売
債権者が、公正証書・判決等の債務名義に基づき、債務者又は保証人の所有する不動産に対して当該不動産を管轄する地方裁判所に対して強制競売を申し立てることができます。
地方裁判所では強制競売の申立てを受理すると、「平成○○年(ヌ)第○○号」事件との事件番号を付して強制競売を進める。
債務者の意思は反映されずに裁判所の命令で手続きが進むため、強制競売と呼称されています。
(2)担保不動産競売
債権者が、債務者・物上保証人から抵当権・根抵当権の設定を受けた担保権者である場合に、抵当権(根抵当権)の実行として、当該不動産を管轄する地方裁判所に対して担保不動産競売を申し立てることができる。
地方裁判所では担保不動産競売の申立てを受理すると、「平成○○年(ケ)第○○号」事件との事件番号を付して担保不動産競売を進める。
原則として、強制競売の規定が準用される。
4.任意売却
担保不動産における任意売却とは、住宅ローンや借入金等の返済が困難になった場合、債権者は担保権(抵当権等)の実行により債権を回収する事になるが、競売による不動産の売却によらないで、一般市場で担保不動産を売却することをいう。
5.競売の評価額
競売の評価額は、一般市場における価格(いわゆる正常価格)から、競売市場の特殊性を考慮して、正常価格を下回るいわゆる最低売却価格の基準となる評価額である。
6.競売および任意による売却価額について
(1)競売市場による入札価額
競売市場においては、前記2.競売の評価額を基準として、個人・法人を問わず保証金を裁判所に支払えば誰もが入札でき、一番高い価額を提示した人が落札することになります。
従って、人気物件には多数の需要(入札者)が参加し、落札価額はいわゆる正常価格を大幅に上回るケースも数多く見られます。
その理由は、1つの物件を多数の需要で競争するという入札制度の特徴によるものです。
(2)任意による売却価額
債権者側が、競売市場では現金化に時間がかかる等の理由により、任意による売却を選択する場合があります。
この場合は、一般的には、売却価額が競売市場による落札価額を下回ると思料されます。
その理由は、競売による評価額を上回ってはいるが、現金化を急いだ結果、需要者が限定されることにより、競売市場での落札価額を下回った売却価額になると思料されます。
競売の落札価額は、市場価格より2、3割安いという風評がありますが、それは間違いであり、正確には最低売却価格の基準となる競売の評価額が市場価格より安いのであって、競売市場における一番高い札による落札価額は、正常価格を大幅に上回るケースも数多く見られます。